消化器疾患

 消化管は食物を消化、運搬し、最後には糞便として排泄する働きがあります。
 その為、腫瘍や潰瘍、炎症などの器質的疾患だけではなく、便秘や逆流性食道炎などの消化管運動不全に伴う機能的疾患も多いのが特徴です。胃の痛み、胸の痛み、胸やけ、げっぷ、のどのつかえ、のどの違和感、胃のもたれ、膨満感、食欲不振、おう吐、腹痛、便秘、下痢、下血など、実にさまざまな症状が起こりえます。

 このような症状は消化器以外の臓器が原因となって起こることもあり、症状だけから病気を正確に突き止めることは不可能で、内視鏡検査などの検査で判断する必要があります。
 また悪性腫瘍の場合は発見が遅れが生命予後に影響する場合があります。
 気になる症状がある場合は自己判断で経過観察せずにご相談下さい。

消化器疾患

 具体的な疾患としては、食道癌、胃癌、大腸癌などの悪性腫瘍、粘膜下腫瘍やポリープなどの良性腫瘍、逆流性食道炎、急性胃炎、胃・十二指腸潰瘍、急性腸炎、出血性大腸炎、虚血性腸炎、潰瘍性大腸炎などの炎症性疾患や腸閉塞、便秘症などの機能異常症が該当します。

逆流性食道炎

 強い酸性の胃液や、胃で消化される途中の食物が食道に逆流して、そこにとどまるために、食道が炎症を起こし、胸やけや胸の痛みなどさまざまな症状が生じる病気です。
 もともと日本人には少ない病気でしたが、食生活の変化などによって、最近、患者さんが増えてきています。

ピロリ菌

 ピロリ菌の正式名称は、「ヘリコバクター・ピロリ菌」。食べ物や飲み水から感染する経口感染がほとんどで、多くが幼少時に感染すると考えられています。日本の場合は衛生環境が十分整っていなかった時代に生まれた方の感染率が高く、50歳以上の約80%の人はピロリ菌を保菌していると言われています。
 また、胃がんとピロリ菌は密接に関係しており、胃潰瘍、十二指腸潰瘍や胃炎などの患者さんを対象とした調査では、10年間で胃がんになった人の割合がピロリ菌に感染していない人では0%だったのに対し、ピロリ菌に感染している人では2.9%だったとの報告があります。(※ピロリ菌に感染していなくても胃がんになる可能性はあります。)

胃・十二指腸潰瘍

 胃・十二指腸潰瘍は、ピロリ菌や非ステロイド性抗炎症薬、胃酸などによって、胃や十二指腸の粘膜が傷つけられ、粘膜や組織の一部がなくなる病気です。上腹部の痛みや胸やけ、膨満感などの症状が起こります。胃潰瘍・十二指腸潰瘍の多くは、薬などで治すことができますので、早めの治療が肝心です。

食道がん

 食道がんは、先進諸国中では日本に目立って多く、現在でも増加傾向にあります。
 早期のうちに発見できれば、ほとんど完全に治癒します。早期発見には、年1回の検診が不可欠です。とくに喫煙や飲酒などの危険因子がある人は、異常がなくても定期的に検診を受けることが大切です。

胃がん

 胃がんは癌の中でも肺がんに次いで二番目に多いがんです。
 また、胃がんは症状があまりない事が多く、早期発見が難しいがんです。胃がんが検診目的でうけた内視鏡検査で発見されることが多いのはそのためです。
 胃がんは、早期に発見できればほぼ100%近く完治できる病気です。早い段階で胃がんを発見するためには定期的(1年に1回)な内視鏡検査を受けることをお勧めします。

大腸がん

 大腸がんは食事の欧米化、とくに動物性脂肪や蛋白質の過剰摂取などにより、日本でも近年急速に増えています。
 早期の大腸がんではほとんど自覚症状はなく、大腸内視鏡や便潜血検査で見つかることがほとんどです。
 大腸がんは、早期に発見できればほぼ100%近く完治できる病気です。早期発見するために大腸内視鏡検査であれば2~3年に1回、便潜血検査であれば1年に1回の検査をお勧めします。

生活習慣病

 生活習慣病とは、偏った食生活や運動不足、ストレス、喫煙など、毎日の好ましくない生活習慣の積み重ねによって引き起こされる病気の総称です。
 糖尿病、脂質異常症、高血圧、心臓病、脳卒中は生活習慣病の代表的な例です。

生活習慣病

 また、生活習慣病は風邪やけがのようにしばらく治療をすれば完治するという病気ではありません。
 一時的に薬で血圧を下げたり、血糖を下げたり、コレステロールを下げたりしているだけで、病気が根本的に治っているわけではなく、ただ症状を抑えているに過ぎません。一度薬を飲み始めたら、自己判断で薬を止めるのは止めておきましょう。

高血圧

 高血圧とは、安静状態での血圧が慢性的に正常値よりも高い状態をいいます。高血圧になると血管に常に負担がかかるため、血管の内壁が傷ついたり、柔軟性がなくなって固くなったりして、動脈硬化を起こしやすくなります。
 また、高血圧の状態を放置していると、動脈硬化を促進し、脳卒中や心疾患、あるいは慢性腎臓病などの重大な病気につながります。
 一度、高血圧と診断されたら、症状を悪化させないためにもきちんと治療を受けることをお勧めします。

糖尿病

 糖尿病は、血液の中のブドウ糖(グルコース)の濃度(血糖値)が高い状態(高血糖状態)が続く病気です。
 血液は体中を流れていますので、糖尿病を放っておくと体全体が砂糖漬けのような状態になり、様々な病気を引き起こします。
 一度、糖尿病と診断されたら、症状を悪化させないためにもきちんと治療を受けることをお勧めします。

脂質異常症

 脂質異常症(高脂血症)とは、血液中のLDLコレステロールやトリグリセライド(中性脂肪)が多すぎたり、HDLコレステロールが少なくなる病気です。。
 脂質異常症(高脂血症)をほうっておくと、血管の動脈硬化が少しずつ進んでいき、やがて心筋梗塞や脳卒中などの深刻な病気が引き起こされることになります。。
 一度、脂質異常症と診断されたら、症状を悪化させないためにもきちんと治療を受けることをお勧めします。

心臓病

 心臓は全身に血液を送るポンプの役割を担っており、異常をきたすときわめて重篤な症状をおこすものが多く、日本人の死亡原因の上位を占めています。
 代表的な疾患としては、心不全や心筋梗塞、心内膜炎、心臓弁膜症などが挙げられます。

脳卒中

 頭蓋内の血管に異常が発生し、出血にともなう炎症や虚血などの脳組織障害が起こることで発生する病気のことです。
 正式名称を『脳血管障害』といい、代表的なものとしては脳梗塞や脳出血、くも膜下出血などが挙げられます。
 高血圧症や脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病を原因とする動脈硬化が最大リスクと言われており、近年の日本では食の欧米化にともなう罹患率の上昇が懸念されています。